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翌日、笛吹 静子は死体となって発見された。
自宅で、一人で夜通し針の山を飲み込み続け、最終的には喉は裂けてそこから夥しい量の血液を垂れ流しながら絶命していたという。
普段、滅多に人など寄り付かない笛吹の家には、朝から村中の人間が群れていた。工藤 源氏の件に続く怪事件。村人たちの動揺は明らかだった。
「これは、殺人なんか。事件なんか」
「分かりませんが……明らかに異常なのは確かです。脅されてやったにしろ、自殺にしろ、わざわざこんな異常な手段を選ぶ意味が分からない。普通の人間に、こんな狂った真似ができるはずがない」
「じゃあ、なんだ!? 笛吹さんはなんで針なんか飲み込んで、死んだ?!」
駐在を村人たちが囲む。こんな田舎の駐在に理解できるはずがない。
これは、祟りに見せかけた私の復讐なのだ。
私は村人たちが群れている姿を確認し、ゆっくりと笛吹の家の屋根上に上り始めた。
村に告げるのだ、私の復讐……『鈴音三十人殺し』の再来を。
「おい、あれ!」
村人の一人が私の姿に気付き、声を上げる。
屋根上の私に村人たちの視線が一斉に注がれる。喧騒が止み、途端に沈黙に包まれる。
まるで、私の言葉を待望しているかのようだ。
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