第四話 『第二の悲劇 針千本』

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「……皆さま、これは祟りです。敗戦から復興しようともせず、ただ時の流れに身を任せ続け、怠けるだけの村人達に鈴音様は大変お怒りです。自分が殺された日から、この村は何も変わっていないと」  私の言葉に、数秒間の沈黙が続く。村人たちは揃いも揃って茫然と呆けた顔をしていた。  私の頓狂な言葉に彼らは言葉を返す事が出来なかったのだ。 「ふざけるな! 裏切者が何を!」  すると、一人の初老の男が屋根に向かって叫び声を上げる。  それに続き、周りの村人たちも罵詈雑言を私に投げかけてくる。  私はその光景に対し、諦めの意味でのため息をつき、抱いていた人形を頭上の上にまで抱え上げる。 「この骨人形こそ、鈴音様がこの村にいらっしゃる証。長年の罪滅ぼしの末に一度は村を許した鈴音様も、今の村の体たらくに怒り、こうして再び村に戻られました」  村人を見下すように抱え上げられた人形。さっきまで感情をむき出しにしていた村人たちも、その人形の魔力に魅入られたかのように押し黙ってしまった。 「鈴音様は村人たちの腐り切った心によってこの村が掃き溜めと化すことを危惧しておられます。あなた方がそれに気づくまで、凄惨な祟りはこれからも続きます」  その日の夜中、私は賢を呼び出した。 「笛吹のおばさん、どうやって殺したんだ」  開口一番、賢は私に動揺した様子で私に尋ねた。そんな賢とは対照的に私は笑顔で答えた。     
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