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「息子の骨を腹に入れれば、自身の肉体に息子の魂が宿るって話をしてね。あ、これは誤催眠じゃなくて私の話術ね。こんな話でも、骨人形が目の前にあったらこの村の人間は鈴音様との因果を疑うしかない」
別に彼女に恨みがあったわけじゃない。けれど、彼女の死によって村全体が怯え、狼狽える姿を思い浮かべると笑いが止まらない。
私にとって笛吹の価値など、その程度のものなのだ。
「そして、『針の山』を息子の骨の欠片だと『誤催眠』させて、それを飲ませた。血反吐と涙を流しながら、笛吹さん必死になって針を喉に押し込むの。息子の痛みはこんなもんじゃなかったてね、あはは」
賢の表情は固まっていたけど、賢もきっと嬉しいはずなんだ。この村が、少しずつでも崩れていって、やがて滅ぶ。
雪のため? 違う、私のために。
「賢。次の獲物は決まってるの?」
黙り込んでいる賢に尋ねる。
それに反応して、賢は用意していたかのように口を開く。
「伏見 多恵。元々は看護師だったが、終戦と共に辞職。今は結婚して主婦をしている。ああ、それとお腹に子供がいるみたいなんだ」
「なぜその女なの?」
賢の表情は変わらず、淡々に言葉を吐き出す機械のようだった。
「ああ、伏見さん……実はな」
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