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第五話 『第三の悲劇 懐妊』
伏見 多恵。村の女性の中では比較的若い女だが、戦後すぐに結婚をしている。そして今では妊娠までしており、幸せに見える女。こんな女に、心の傷があるのかと鶴は疑っていたが、その過去を知ると彼女も黙って納得した。
彼女は戦時中、看護婦として仕事をしていた。そしてこれも軍事関係の人間だった祖父から昔に聞いた話だったが……彼女は看護婦でありながら、戦場の兵士たちに強姦に近い形で性欲のはけ口に使われていた。
特に部隊長と言う階級の高い兵士のお気に入りだったらしく、伏見 多恵は毎日のようにその男に犯されていたという。
村では彼女の過去は知られておらず、幸せな新婚という体で、今は夫と共に幸せに暮らしている。
彼女を獲物として提案した時、鶴は壊れたように笑っていた。
幸せな人間を、不幸のどん底まで突き落とす事ほど、面白いことは無いと……。
「笛吹のおばさん、酷い有様だった」
笛吹さんの家に行っていた夫が帰って来た。昨晩、笛吹さんが無くなったというので夫がその様子を確認しに行ったのだ。
だが、ただ亡くなったでは無かった。詳しくは教えてくれなかったが、この世のものとは思えないほどの酷い死に方だったという。
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