第六話 『第四の悲劇 達磨』

5/11
前へ
/119ページ
次へ
 だが作場の命がこの村への復讐に役立つのだ。私は罪悪感の欠片も感じることは無かった。 「そう焦らないでください。もう計画は練ってあるんです。具体的な計画は明日伝えます。それに、畑も燃えてしまったんですから食事のことも考えないと。しばらくは私が持ってきますから、家で安静にしてください」  むしろ、こんな死にぞこないの老人の命を活かすのだ。感謝してほしいくらいだ。 「それと、今は何かと物騒ですから、鍵は閉めていきますよ。車椅子も壊れかけてますから、修理しておきますね。全く、今までよくこんな状態で……」  私はてきぱきと手際よく部屋を片付けながら、まるで娘と父の会話のようだと思った。  私の父はもう死んでしまったけれど、こんな会話をしたような覚えが微かにある。 「お前、なんでそこまで俺の事を」  作場は私の姿を、どこか遠くを眺めるような視線で見ていた。何か、遠い過去を思い出しいるような、そんな雰囲気だった。 「何でって、共に復讐を遂げる相方じゃないですか。それに、似てると思ったんです。お互い、村に色々なものを奪われた境遇とか」  私は作場の方を振り返り、笑顔で答えた。  今まで屍のように乾ききった表情には潤いが蘇ったように見えた。 「俺の娘が生きてりゃ……こんな風になってたのかもな」     
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加