第六話 『第四の悲劇 達磨』

7/11
前へ
/119ページ
次へ
 だが見れば分かる。この老人は既に死の一歩手前にいる状態だ。 「申し訳ありません、この貧しい村ですので食料の確保も一苦労なのです。あなたもよくご存じでしょう」  私の笑えない冗談を、作場は笑った。  何故、こんな状況でも笑えるのだろう。怒るのではなく、笑えるのだ。 「……笑う以外、何か感情は無いのですか」  私は不思議を通り越して、作場に恐怖を抱いた。泣くわけでも喚くわけでもなく、ただ笑っている。 「全部、嘘だったんだろ……お前の話」 「なら、なぜ怒らないのですか……?」 「もう、これから死ぬってのに……最後の最後まで怒ってたってしょうがないだろ」  理由はたったそれだけだった。この男にとって、死は救いのようなものなのかもしれない。この鈴音村の呪縛から逃れるための。 「確かに、私の話は嘘でした。けれど、全てじゃない。この村に復讐をする……これだけは本当です。そして、その過程であなたの無念を晴らすと約束したことも、嘘ではありません」 「……そうか」  作場は驚きもせず、頷く。 「正確に言えば、あなたの死が私の計画の一部なのです。あなたの死が無駄になることは決してないと、約束します。あなたには、確かめる術はないでしょうが」     
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加