第六話 『第四の悲劇 達磨』

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「その皮の下にはどんな楽園が広がっているのでしょう。皮に歯を立てれば甘い肉汁が口いっぱいに広がり、その奥には更に濃厚な脂が詰まっていて……」  今の作場は自身の血肉が、極上の御馳走だと錯覚している。 「ああ……こんな、こんな綺麗な食べ物がこの世にはあったんだなぁ……こんな」  作場は涙を目に溜めながら、濡れた声で言った。  彼は知らない。その肉が、自らの肉である事を。  そして、これから自らの血肉を自ら食するという残酷な現実も。 「待ちきれないでしょう? いいのですよ、もう何も我慢する必要はありません。さぁ、遠慮などいりません、好きなように貪りなさい」  私の合図とともに、作場は獣の様に自らの腕に齧り付いた。  痛みなど感じてはいない。ただ、その圧倒的な美味に、死にかけの老人とは思えないほど激しい食べっぷりだった。 「最後に……あなたに出会えて良かった」  私は作場に背を向け、そう呟く。  作場にはもう私の声など聞こえてはいない。だが、私はそう言わなければいけない気がしたのだ。  この村の、最後の良心であった彼に。  作場の発見は今までの事件と比べて発覚は遅かった。作場自身が人との関わりを避け、村のはずれを住処に選んだことが影響したのだ。  籠った小屋の中は、酷い状態だったという。腐りかけの死体が一体、発見された。     
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