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第二話 『神から受け継いだ異能』
俺と雪、そして鶴の三人は日が暮れる前に白羽の家の前に着いた。途中の道で雪ちゃんが鈴音神社のお参りに興味津々だったが、日が沈みそうだったので鶴が無理矢理引っ張りながら帰って来た。どうやら健康を願いたかったようだが、また日を改めて行けばいい。
雪は約束通りに家の前で口の中で転がしていたおはじきを吐き出し、それを姉である鶴に返した。
俺はその異様な光景を黙って見ているしかなかった。
そんな俺を尻目に、雪は裏口からこっそりと家に入っていった。
「……どういうことだ」
雪が家に入ったのを確認してから、俺は鶴に問う。
「実を言うと、大した話じゃないんだ。私は幼い妹を……騙している」
「それは、見れば分かる。ただのおはじきを飴玉だと騙して雪に与えているんだろう」
どういう術かは知らないが、雪はおはじきを本当の飴のように舐めていた。
貧しさを紛らわせるため、無理をして舐めているような様子でもなかった。
「……うん。あの子は私が本気でいくら舐めても溶けることのない、魔法の飴を持っていると思い込んでる。実際は、こんな古びたおはじきなのに」
「……それは、雪が本物の飴を舐めたことが無いからって事か?」
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