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一時はどうなるかハラハラしたが、
バルコニーから満月が見える。
「眷族の儀を執り行う」
「覚悟は出来ておるか?」
唐突に脳裏に響く声。
「はい!如何様に」
姿なき闇へ、ドレスの裾を掴み一礼する。
「これを飲み干すがいい」
声が聞こえたと同時に現れたショットグラスに、
赤黒いドロとした液体が満たしている。
私は迷わず一気に飲み干した。
芳醇なワインに似た風味が微かに残る。
「人としての身体は死へ」
「新たな御身を授けよう」
姿無きまま声も途切れた。
口惜しいと思いつつ、次こそは逢えるかもという想いが交錯する。
月が欠ける様に、体調が悪化していく。
高熱にうなされて7日目の夜私は意識を手放した。
城内では、悪魔の呪いと囁かれる。
死ぬってこんなに苦しいのね。
眠る様に安らかに逝けないものかと
内心不安になっていた。
目覚めたのは、大理石の棺の中
真の闇でも見えるし、苦しくもない。
脳裏で呼びかけると迎えが来た。
第二の人生が幕開けである。
漸く声の主にお逢い出来た。
ワイルドで容姿端麗な
殿方の懐に抱かれ空を舞う。
薄い皮膜の様な黒き翼広げ、
音もなく緩やかに飛行する。
古城に招かれたのだが、
眷族は私のだけじゃなかった。
私で10人目だそうな。
世界の美女を集めているに過ぎず、
不定期に眷族は増えていく。
ハーレムの一員でいる事に、
次第に飽きてきたし呆れてきた。
ただ城主の帰りを待つ生活では、
母国と大差ない。
そんな時ふと脳裏に悪魔の姿が
浮かびあがった。
不死になった今なら面白いかもしれない。
城主に許しを得て、悪魔探しの旅に出た。
大分容姿も変わってしまったが、
悪魔は私だと分かるかしら。
ワクワク出来たらそれだけでいい。
刻は有り余っているのだから、
楽しまないと損である。
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