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桜の木の下で
「この桜の木には、名前が付いているの」
小高い丘の上に、一本の桜の木が立っている。
木之下サクラは、桜の木に手を添えながらそう言った。
「私が付けたの」
「何て名前?」
僕が木之下に問いかけると、
「秘密」
そう言って木之下はいたずらっぽく笑った。
「当ててみて」
そう言われても見当もつかない。
「何かヒントは無い?」
僕が聞くと、木之下は言った。
「この桜はね、特別な木なの」
「どんな風に?」
「この桜の木の下では、事件が起きるのよ」
「どんな事件?」
「色んな事件。いい事件も、悪い事件も」
サーッと風が吹き抜けて行く。
「男女が結ばれたり、花見が行われたり、人が殺されたり、化け物が現れたりーーー」
木之下サクラは、妖しげに笑った。
(分かるーーー?)
目がキラリと光り、小悪魔の様な微笑みを浮かべながら、木之下はそう問いかけているみたいに見えた。
「うん、分かったよ」
僕は答えた。
木之下サクラが付けた、この桜の木の名前はーーー
「エブリスタだ」
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