ザムザは静かに眠るだけ

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 カーテンの隙間から、静かに朝日が差し込む。窓の外からは、新たな一日を告げる鳥たちの声。しばしのあいだ、平和な朝の静けさが続く。そして、いよいよ出番だと言わんばかりに、携帯のアラームが鳴り出し、その静寂をバリバリと引き裂いてゆく。携帯があらん限りの声を張り上げ、起こさんとするその主人は、いまだベッドの中で眠り続けるひとりのサラリーマンだった。  彼は、「今日は朝一で大事なお客様を訪問しなければならないから、絶対に寝坊するわけにはいかない」と、いつもよりも早くアラームをセットしていたのだが、現況を見る限り、その試みは上手くいっていないようだ。携帯の主は、最大音量でつんざくような目覚ましなどどこ吹く風で、気持ちよさそうな寝息を立て続けている。  そんな彼を心配したのか、下からドン、ドンと忙しげに階段を上ってくる音がする。 「今日、早いんじゃないの? もう起きなくて大丈夫? 」  それは、彼の母親の声だった。そう、この男は、実家から通える会社に就職し、親元で暮らし続けていたのだった。それは何も、彼に自立心がなかったというわけではなく、父親が歳をとり衰えてきていたため、かわりに一家の大黒柱になろうと決意したからだった。  そんな彼の意図と努力を知っているから、母親は疲れきったこの息子を時々起こしてやりに行くのもやぶさかではなかった。しかし、いつもであれば、声をかけてやるとすぐに飛び起きてくる息子が、今日に限っては眠り続けている。心配になった母親は、彼の部屋のドアを強めに叩き、少し語気を強めて「早く起きなさい」と呼びかけた。
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