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実験結果
そして迎えた、9月9日。
未可子の誕生日のささやかなお祝いは、僕たちの住むマンションで行うことになっていた。
午後7時を迎える頃。
帰宅した僕は、先に帰っていた未可子に出迎えられて驚いた。
「あれ?早かったね。今日は、9時くらいになるって言ってなかったっけ?」
未可子は冗談めかした仕草で、胸をはって見せた。
「へへ。部長に誕生日で夫とパーティーしますって言ったら、特別に早く帰してもらえたの!」
「そっか。素晴らしい上司だね」
僕たちはそれから、リビングでささやかなパーティーを開催した。
「ああー。やだなぁ。私も圭さんと同じ年になっちゃったあ」
未可子の顔はとても嬉しそうで、きらきら輝いていて、僕はずっとそれを眺めていた。
そして、この時間がずっとこのまま続けば、どんなにか幸せだろうと思った。
「では、そろそろお待ちかねのプレゼントタイムにする?」
ケーキを食べ終わった頃。
とうとう未可子がそう言い出した。
「なーにっかな。なーにっかな。ねぇ、私も6年ぶんの知識があるから、今度はちょっとレベルの高い専門書でも全然嬉しいんだけどなぁ」
彼女が、僕の膝にのって甘えてくる。
さっきあけたシャンパンのせいで、少し酔っているようだった。
僕はかすかに笑う。
胸の奥の、どうしようもない緊張を誤魔化すために。
「····今回は、いつもと違うのにしてみたんだ」
「えー!? 何なに。どういうこと?」
「これ。―――開けてみて」
もう、運を天にまかせるしかなかった。
僕は丁寧に包装された四角形の箱を、彼女に手渡した。
彼女は両手を出して、恭しくそれを受け取って見せる。
そして、顔を輝かせたまま、何だろう、と呟きながら、さっそく包みを開けていく。
僕の心臓は、どくん、どくん、と一瞬ごとにその鼓動を刻んでいった。
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