夢を見ていた

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「宏さん!」 朝早く、妻の声がした。 「もう起きないと遅刻ですよ!」 私はベッドから飛び起きる。 「ヤバいヤバいヤバい!」 慌てる私を見て妻の優香は、ため息を吐く。 「また遅くまで映画見てたんでしょう?」 図星だ。 寝息をたてる妻の横でスマホで映画を見るのが私の楽しみだ。 「昨日は良かったよ。今度借りてくるから一緒に見よう」 「はいはい」 優香との間に子供は出来なかった。 だからこそ二人の時間を大切にしたかった。 優香の喜ぶ顔が見たいがために、映画を選別したり、曲を選別したりするのだ。 子供がいなかったことは寂しいが、その分、長く恋人気分でいられると開き直っていた。
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