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前編
「急募。眠るだけの簡単なお仕事です」
私はその怪しいアルバイト募集のチラシを食い入るように見つめた。
年齢不問。勤務時間応相談。
ーー睡眠科学研究室
私の一日の睡眠時間はおよそ十六時間。一日の三分の二は眠っている。
生まれつきそういう体質なのだ。
一日のうち、起きていられるのが八時間程しかない私は、学校に行くのも、働くのも、時間的に大きな制約を受ける。
両親はそんな私に働くことを求めていない。
私が働かなくても生きていけるだけの財力がうちにはある。
お金はあるが時間は無いという両親は、まともな生活を営むことが難しい私に子守役を雇っている。
私は眠気に逆らうということができない。
睡魔は突然やってきて私の意識を奪っていく。
立っていようが、食べていようが、泳いでいようがお構いなしだ。
そのせいで死にかけたことも一度や二度ではない。
常に誰かに見ていてもらわなければ、いつどこで眠ってしまうかわからない厄介な体質なのである。
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