後編

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 明け方、ベッドの中にいた私は夢を見ていたのか、事故の場面をありありと思い出して飛び起きた。  こんなことは初めてだった。  一つ気付いたのは、あの事故は脇見運転なんかじゃないってこと。  白い車に乗っていた男性は、前方の赤い車を睨むように見て加速した。  しかも事故の後、女性の車から手帳のような物をこっそりと盗んだ。  多分、母子手帳だ。  私の目は直接にその光景を見ていないけれど、夢の中で私は事故現場を俯瞰していた。それで気付いたのだ。  もちろん夢だから、それが事実ではないかもしれないけれど。 「私が夢を見てないなんて、嘘じゃん!」  私は今日もう一度、千織教授の研究室を訪ねることを決めた。  昨日の千織教授の口振りからして、私の知らない私の体質のことを、何か知ってるんじゃないかって気がする。  昨夜はもう遅いからって追い帰されてしまったけど、今日は納得いく説明を聞くまで居座るつもりだ。  とはいえ、流石に早朝から押しかけるわけにもいかない。私はタブレットPCで「千織雅貴(ちおりまさき)」「睡眠科学研究室」を検索してみた。  不思議な程に何も出てこなかった。  SNSも、地図も、電話番号さえ見当たらない。  このネット社会でこんなことってあるだろうか?  私は隣の部屋に行って、要にこのことを話した。     
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