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「それってプライバシーの侵害ですよね?」
「僕は……」
言いかけて、何故か要の方をちらりと見る。
「忙しいんで、また今度」
じゃ、と逃げようとする教授の腕を思わず掴んでいた。
見上げた顔が、長い前髪のせいか、一瞬何かの動物のようにみえた。
鼻がぐんと伸びたような気がしたのだ。あり得ないけど、それはまるで……
「……獏?」
悪夢を食べるという伝説の生き物。
千織教授が開発しようとしているのが「獏」だから、そんなイメージが湧いたのかもしれない。
千織教授は私の呟きが聞こえたのか、私をじっと見下ろしている。
「よろしい。あとで研究室に来なさい」
やんわりと私の腕を押し戻し、そう言うと踵を返して警察署を出て行った。
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