後編

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「それってプライバシーの侵害ですよね?」 「僕は……」  言いかけて、何故か要の方をちらりと見る。 「忙しいんで、また今度」  じゃ、と逃げようとする教授の腕を思わず掴んでいた。  見上げた顔が、長い前髪のせいか、一瞬何かの動物のようにみえた。  鼻がぐんと伸びたような気がしたのだ。あり得ないけど、それはまるで…… 「……獏?」  悪夢を食べるという伝説の生き物。  千織教授が開発しようとしているのが「獏」だから、そんなイメージが湧いたのかもしれない。  千織教授は私の呟きが聞こえたのか、私をじっと見下ろしている。 「よろしい。あとで研究室に来なさい」  やんわりと私の腕を押し戻し、そう言うと踵を返して警察署を出て行った。     
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