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警察には夢の話はしなかった。夢は所詮夢だから。
逆に聞かされたのは、あの怪我をした赤い車の女性が、白い車の男性に殺されると訴えているらしいという話だった。
不倫関係にあった二人に子どもができて、男は堕胎をさせようとしたが、女性がそれを拒んだ。結果、衝動的に事故を起こしたんじゃないかということらしい。
身勝手な話だ。
そしてその後すぐ睡眠科学研究室に向かうと、早川助手が段ボール箱に荷物を詰めているところだった。
「辞められるんですか?」
「いいえ、カナダの研究室に移ることになったんです。
あ、助手を募集するそうですよ」
手渡された求人票を見ていると、横から伸びた手がその紙を取り上げた。
「君は不採用だ」
千織教授が嫌そうにそう言った。
「要くん、だったかな。君なら大歓迎だよ」
「どうしてですか?」
「言っただろう。夢を見ない君は僕に必要ないと」
「だから、見たんですって!夢見てます」
「夢っていうのは突拍子もなくて、曖昧で、ふわふわもこもこした美味しいものなんだよ。君のは映像だ。食指が動かん」
「教授、仰っている意味が分かりません」
「君は僕の正体に気付いたんだろう?」
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