25人が本棚に入れています
本棚に追加
運転手は女性のようだ。意識はあるようだが、車から降りて来られないようだった。
後ろの車からは若い男性が降りてきて、呆然と立っている。
要は直ぐに携帯電話を取り出して、救急と警察に通報し、店から出てきた店員さんに通報したことを伝えると、私のところに戻ってきた。
「事情聴取があるかもしれない。連絡先だけ店の人に伝えたから行こう。待ってたら面接に間に合わなくなる」
「怪我した人は?」
「今は動かさない方がいいと思う。爆発の危険は無さそうだし、直ぐに救急車が来る」
「まだ時間あるし、見届けてから行こうよ」
私が言うと、要は空いている席を探して店の奥の方へと移動した。
「びっくりしたね。なんかまだ手が震えてるよ」
大きな音に驚いたのと、目の前で起こった事故に冷や汗が出た。
私は運転免許を持っていない。いつ眠ってしまうかわからない人間がハンドルを握っていいはずはない。
運転は専ら要の仕事だ。
事故を見ると、もし要が事故に遭ったらと考えてしまう。
助手席で私が眠っている間に何かあったら、私は助手席に居ながら何の助けにもならない。
「事故、恐いね」
震える手を誤魔化すように擦り合わせていると、要がジャケットを脱いで私の肩にかけてくれた。
そこからしばらく記憶が無い。
最初のコメントを投稿しよう!