前編

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 気がつけば要の車の中にいて、時計は三時を回っている。面接の時間を一時間程過ぎていた。  なんで起こしてくれなかったの、と普通の人は言うのかもしれない。  あるいは目覚まし時計だとか、携帯のアラームだとか、そういうもので目覚めることができるのだろう。  私の体はどこまでもわがままにできている。  外部からの刺激で目覚めたりなどしない。あくまでも私の中の何かによって、眠るタイミングも起きるタイミングも支配されている。  誰も、自分のことさえも責めることはできない。  今できるのは、時間に遅れた私でも、まだ面接を受けることができるかどうか確認することだけだ。 「要、面接会場に行って」 「もう着いてる。遅れることも連絡済み。ほら、寝癖直して」 「流石!ありがとう」  手渡されたブラシで手早く髪を整え、鏡をチェック。  リップを塗り直して、車を降りた。     
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