25人が本棚に入れています
本棚に追加
私は要と一緒に面接会場へ入った。
睡眠科学研究室のプレートのかかったすりガラスの向こうには、白衣を着た人物が二人。
一人は男性。ひょろりと背の高いボサボサ頭の教授は千織雅貴という。長すぎる前髪に隠れてその目は見えない。
もう一人は助手の早川美琴。こちらは美人というよりは可愛い系の、中学生にも見える童顔。教授との身長差が四十センチはあるかもしれない。
「桜井優香です。遅くなってすみません」
「あぁ、例の眠り姫だね。前にも会ったことあるけど、憶えてる?」
眠そうな、やる気無さそうな声で千織教授が言う。
「あ、あの時の……」
その大型犬ぽい風貌と、やる気無さそうな喋り方で思い出した。
二年くらい前に大学病院の健診を受けに行った時、私の検査を担当してた人だ。教授になってたなんてびっくりだ。
「え、本当に憶えてるの?それは驚きだな」
自分から尋いといて、よく言う。
「君がこの研究に参加してくれるなんて僕はラッキーだな。よろしく頼むよ。桜井君」
千織教授はふふふふと不気味に笑いながらコーヒーを飲んでいる。
喋り方こそやる気無さ気だが、案外そうでもないのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!