前編

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 それを無視して早川助手が、研究と仕事内容について説明してくれた。  なんだかいいコンビだ。 「私たちの実験の目的は(ばく)の開発です。獏ってご存知ですか?夢を食べるという伝説の生き物です」  伝説の生き物を開発する? 「生き物を作るわけじゃないんですよ。夢を見せたり消したりする機械を開発しようとしてるんです。それだけじゃなくて、睡眠時間をコントロールしたり、」 「えっ、そんなことできるんですか?」  私が身を乗り出した分だけ、早川助手が後ろへ身を引いた。 「あ、すいません。どうぞ続けてください」 「その研究です。桜井さんの体質については、実は以前から噂になっていました。  是非詳しいデータを取らせてください。私たちの研究が桜井さんのお役に立てることもあるかもしれません」  早川助手の力強い言葉に、私は微かな期待に胸を躍らせた。  ま、すぐに撃沈することになったんだけれども。それはおいおい話すとして。 「これが眠っている間の様々なデータを記録する装置、名付けて夢枕クン二号です」  早川助手の後方に横たわるガラス張りの柩。 「横になってみます?」  早川助手が端末を操作すると、ガラスの蓋が自動で開いた。  これがこれから私の職場になるのだろう。     
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