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パソコンとか電話とかの乗ったデスクじゃないのがちょっと残念だが、寝心地は悪くなさそうだ。
私は恐る恐るそこに腰掛け、横になってみた。
「この中で眠るだけで、呼吸、体温、心拍、脳波などのデータが記録できるようになっています。
お好きなパジャマ等をお持ちくださいね。シャワー室もありますから」
早川助手の声を聞きながら見上げた天井には、薄いグリーンの(おそらく蓄光タイプの)星が貼ってあった。
研究室に似合わないその気遣いに緊張が解れる。
目を閉じてみると、洗い立てのシーツの匂いがした。
そしてまた眠ってしまったのか、次に目を開けるとすっかり暗くなっていた。
夢枕クン二号の何らかのランプが、いくつか点灯している。
早くも一仕事してしまったのかな?
部屋には誰もいないようだ。
「要、いる?」
小さな声で呼んでみれば、隣のソファーからむくりと黒い影が身を起こすのが見えた。
「今何時?」
「夜の十一時前だ。火野君は隣の部屋で休んでもらってる。
桜井君、残念だけど……」
隣にいたのは千織教授だった。
しかも心底残念そうな呟きに、私は続く言葉を息を飲んで待った。
「君、全く夢を見ていないようだ。残念だけど、夢を見ないなら、僕には君は必要ないんだよ」
言われた言葉の意味がうまく飲み込めない。
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