前編

9/9
前へ
/17ページ
次へ
「たまたま今は見なかっただけなんじゃ………」  千織教授は溜息を吐いて、長い前髪をかきあげた。 「君が見てるのは夢じゃない」  ますます意味が分からない。 「眠ってる間に見るのが夢じゃないなら、私は一体何を見てるんですか?」 「今日事故を目撃したね?あれは殺人事件だよ。眠りの優香君」  この時ばかりは千織教授の声が眠そうにも、やる気無さそうにも聞こえなかった。  それはまるで悪魔の下手な冗談のようだった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加