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それは、
それは――――。
「吹雪をあなたにあげるわ。紬」
意を決した私は、誰にも止められない。
私は、扉の前に立ち、私の力ではビクともしなかった扉に触れる。
そう。
私の力では絶対に開かない。
じゃあ、紬の妖力は?
彼女の力を使えば、私は友秀に勝てるだろうし、この私よりも遙かに大きな門でさえ、壊すことができる。
「さようなら。佑」
私は静かに目を閉じて、全身に力を込めた。
(集中しろ、私)
私は元から霊力が高い。
それに紬の妖力を足す。
これを最強と呼ばずになんと呼べばいいのか?
吹雪が本気になれば、簡単に破滅だってできるのだ。
(もっと、霊力を。もっと妖力を!)
どんどん体が熱くなるのがわかった。
じわじわと体内を蝕んでいる、紬の妖力。
「三、二、一ぃぃぃぃ!」
「ゼ、むぐっ」
ゼロ、と言いかけた時、口を押さえられた。
驚いて反抗するが、固定されているように動けない。
一気に体が冷めていく。
「!!」
そんな。
折角溜めた妖力が。
じわじわと体内の熱が抜ける中、自分が暗闇に引きずり込まれることがわかった。
抱きしめられたまま、私の耳元では「自分の命を粗末にするな…っ」と苦しそうに言う聞き覚えのある声が聞こえた。
あなたは…
あなたは―――――。
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