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ぶくぶくぶくぶく…。
自分の体が元に戻されていく感覚。
完全に冷え切ってしまった私の体には、溜めた紬の妖力は微塵も残っていなかった。
水に入っていたような感覚だが、全然濡れていない。
私は、私の行動を止めた者を見るため、振り返った。
青い羽織にオレンジ色の着物。
切れ長の瞳にひょこひょこ動く耳。
そして、複雑な表情をしているこのあやかし。
「佑…」
佑だ。
ずっと、探していた佑だ。
「吹雪」
名を呼ばれ、顔を見ると奴はとても泣きそうな顔をしていた。
らしくない。
私はそう思う。
そして、腰を抜かして座り込んでいる私と目線が合うように自らが腰を低くすると、私の肩に、淡い青色の頭を預けた。
「お願いだから。無茶なことはするなよ…」
本当に、らしくない。
声ですら泣きそう、と表情は見えないが私はそう思った。
今、私の目の前に居る人は、私を知っている人だ。
私と出会った後の…会いたかった方の。
「紬を助けようとしたのか?」
佑は顔を上げ、私の顔をじっと見つめる。
真っ赤な瞳に私の怯える姿がハッキリ映るほどの至近距離に、佑はいる。
「ごめん…ごめんなさい」
私は目を反らして、そう謝るしか出来なかった。
彼の言っている事は事実だから。
私は、自分という存在を消そうとした。
久遠吹雪という存在を。
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