5.歪む歯車

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「友秀、勝手にだけどお邪魔するわよ」 「先に言え、それは」 既に久遠邸に上がり込んでいた私たち。私の声に佑が突っ込みを入れる。 静まり返った家には、誰もいないように見える。 だが、それはあり得ない話なのだ。 体の弱い都ちゃんは家の中で休んでいるだろうし、友秀も都ちゃん一人を置いて外出するだなんてありえない。 いつも通る場所を進み、都が寝ている居間へと向かった。 横開きの襖をゆっくりと開ける。 「都ちゃん?」 すすす、と中へと入った私たちは、中で寝ていた都を発見した。 隣では、友秀もごろりと横になっている。 …都を寝かせ付けていたのだろうか。 珍しく無防備に寝ている友秀を見て、私たちは顔を見合わせた。 「…ん?」 私たちの気配に気がついたのか、友秀がゆっくりと大きな体を起こす。 目を瞬きさせ、擦っている姿は子供のようだ。 そして、紬と佑を見るとハッと我に返ったように目をパチクリとさせた。 「お二人とも、来ていたんですか」 「ええ。少しお話があって」 私と佑は、ゆっくりと畳に腰を下ろす。 座り込んでいた友秀も体制を調えるべく、きちんと正座をした。 「危なかったですね」 「…え?」 私が言おうとした矢先、友秀が先に話題提起をする。 「先ほどまで、城の使いの方が来られていたのです」 「…」 また、あやかし退治のことだろうか。 今度は何を依頼してくるのだろう…。 思い切り沈んでしまった事がバレたようで、友秀は申し訳なさそうに肩を竦めた。 「安心してください。今回のは、本当に退治しなければならない妖怪なのです」
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