短編

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布団を剥ぎ取られた私は声の主に向かって低く唸りながら、渋々といったようすで立ち上がると、そのままハンガーにかけてあったブレザーに手を伸ばし、パジャマのボタンをはずしていく。 「こらっ!まったく……私のいる前で着替えないの!!!恥じらいを持ちなさい!!」 頭に響く怒鳴り声に振り返ると、男物のブレザー姿に、黒髪に軽くワックスを付けた[お兄ちゃん]がたっていた。 私は、はぁ~ぃと軽く返事を返すと、お兄ちゃんが出て行った事を確認し、のそのそと着替えを始める。 ブレザーのボタンをきっちり留め、スクールバックを手に取ると、私はそのまま洗面所へと向かった。 何度も何度も欠伸が出る中、洗面所へやってくると、鏡にはボサボサ頭で締まりのない顔をした私が映し出された。 うわぁ……ひっどい顔……。 締まりのない顔で蛇口へ手を伸ばすと、パパッと洗顔をすませ、髪に櫛をいれ整える。 長くなった髪は鬱陶しい為、後ろにまとめポニーテールにしていった。 洗面所を出ると、廊下に漂う美味しそうな朝食の匂いが鼻を掠めると、そのままリビングへと向かう。 リビングの扉を開けると、朝食の用意をするお母さんと、椅子に腰掛け新聞に目を通しているお父さんの姿が目に入った。 そうして後ろからお兄ちゃんがやって来ると、食卓の輪へと入っていく。 家族団らんで朝食を済ませると、父さんは会社へ、私とお兄ちゃんは学校へと向かっていった。     
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