短編

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あれは私が小学6年生だったある夜、いつものように塾から送迎バスに乗り家に帰ると、いつもついているはずの部屋の電気が消え、中はシーンと静まり返っていた。 「お父さん?お母さん……?」 暗い廊下に向かって二人を呼ぶが、お母さんとお父さんの声は返ってこない。 そのまま恐々リビングまで歩き、扉を開けると目の前には、ドロップペインティングで書かれたように、壁の至る処に真っ赤なペイントがされた部屋だった。 いつもとは違う部屋の様子を呆然と眺めていると、床の上に寝そべる人影を見つけた。 その人影へ恐る恐る視線を向けると、私はその場で凍りついた。 お父さんは背中を滅多刺しにされ、身体中切り刻まれ、血の海の中横たわっている。 お母さんは服を着ていない全裸の状態で、首にはロープがかかっていた。 苦渋の表情を浮かべ固まった母の光を失った瞳と目があうと、私の体がガタガタと震え始めた。 あまりの惨劇に声も出すことも、動くことも出来ない中、突然私の体が宙に浮いた。 歯はガタガタと音を立て、体は氷のように冷たくなっていく。 すると目の間に、真っ赤な血で染まった包丁が現れた。 「よ~し、いいこだ。叫ぶんじゃねぇぞ……」 後方から図太い男の声が耳に届くと、体がゾクゾクと震えた。 男が私に顔を寄せると、ふとタバコと体臭が混ざった不快な臭いが鼻を刺激した。     
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