短編

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焦燥した私を二人は強く抱きしめると、私が落ち着くまで、ずっとそばについててくれる。 そんな彼らの姿に私の涙は止まらなかった。 本当の家族じゃないのに……、こんなにも優しくしてくれる家族に……。 あの事件の後、無くなっていた私の記憶が戻ったと知ったお母さんとお父さんは、悲しい表情を浮かべた。 あなたのお父さんとお母さんは戻ってこないけれど……あなたが無事で本当によかったわ……。 そうお母さんは語り掛けると、私を強く抱きしめてくれて……とても嬉しかった。 それから私がここに引き取られるまでの経緯について、二人から詳しく話を聞くことが出来た。 私はあの時両親二人を殺され、そのショックで記憶をなくしていたらしい。 犯人は未だ捕まっておらず、私はなぜか無事だった。 両親二人をなくした私を、死んだ母の妹だったお母さんが引き取ってくれたそうだ。 あの辛い惨状を思い出すことで私が壊れてしまうかもしれないと考えた二人は、私に自分たちが家族だと伝えたと言っていた。 そんな優しいお母さんとお父さんの気持ちに涙を流すと、血がつながっていなくても私の娘だから、とお父さんは優しく私の頭を撫でてくれた。 そうして記憶が蘇ったあの事件後、私は病院へ行き、精神状態が落ち着くまで療養していた。     
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