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「あの、土曜日なんですけど」
「あ?」
来月のミニコンサートで演奏する楽譜を読み込んでいた竹内先輩は、素早く顔を上げた。
「どよ、土曜日の、買い物ですけど」
「ああ」
女の子のプレゼントを買いに行くのは恥ずかしくないですか?もしよかったら、わたし1人で先輩の誕プレ買いに行きますよ!
スマホのメモアプリで台本まで用意したのに、口から出たのは
「土曜、わたし一人でも大丈夫ですよ?」
シンプルで下手したら喧嘩を売っていると思われそうなセリフだった。
竹内先輩は薄目で静かにわたしを眺める。
細面の顔がこちらをじっと見つめる様子は、悪魔が悪巧みをしているようで怖かった。
「べつに。俺も行くよ」
「そうですか…そうですよね」
「集合、東口に10時半でいい?」
「あ、はい」
「河崎は時間ちゃんとしてそうだな」
それだけ言うとすいっと目線を楽譜に戻した。すっかり怯えているわたしには、絶対遅刻すんなよ、と言っているように聞こえた。
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