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世の中にはイケメンに与えられる名字というのがあるのだろうか。 竹内先輩は、そう思わせてしまう整った顔をしている。ただ、選んだ部活とその深く刻まれた眉間のシワのおかげで、なんとなくモテない方向に進んでいると私は勝手に分析している。 運動部に入部していたらさぞ女の子に囲まれていたに違いないが、彼は吹奏楽部のホルンを選んだ。 吹奏楽部は女子ばかりだが、うちの部活は、昔からなんとなく色恋沙汰から縁遠いらしい。練習はかなり厳しいけれど、恋愛に疎いわたしはその辺における部内ののんびりした雰囲気が好きだった。 そして、先輩はホルンを吹くときも譜面を見るときも顧問のおじいちゃん先生と話すときも、敵に銃口を向けるスナイパーのような目つきをしている。それが原因で、彼は「なんか怖い」「視線で射殺される」「野良猫も逃げていくのを見た」「生活指導の南先生をカツアゲしてるらしい」などなど、よからぬ噂のオンパレードなのだ。 さて、話は変わるけれど、来週の火曜日は先輩の誕生日だ。竹内先輩のではない。竹内先輩の先輩で、わたしの大事な先輩の、美月先輩の誕生日。生徒会書記と吹奏楽部部長を掛け持ちする先生からの信頼厚い優等生、であることを武器に、校則違反のアルバイトを陰でしている先輩だ。アルバイトは自分のホルンを買うためにしているという。 私の部活ではパート(同じ楽器のグループ)のメンバーにバースデープレゼントを渡すのが、習慣になっている。 というか、習慣がなくてもわたしは美月先輩にプレゼントを渡したいから、全く そこは問題じゃない。 悩んでいるのは、そのプレゼントをパートのメンバー同士で相談して買いに行くというところだ。 ホルンは各学年に1人しかいない。3ひく1は2。その回答をひっくり返すべく、トランペットパートの琴葉を誘い、合同で買い物に行こうと思ったけれど、あてが外れてしまった。そこでお察しの通り、イケメンスナイパー竹内先輩と2人で出掛けることになったのだ。
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