桜の下で笑おう

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咲かなくてもいま、笑えると思うんだけど。 でも奈桜人は楽しみにしているみたいだし、桜の下で思いっきりいい笑顔を見せてやろう。 せめてそれで、彼女と会えなくても奈桜人が元気になってくれればいい。 けれど翌日から、奈桜人は河原の桜に姿を見せなかった。 青空の下、満開の桜を見上げる。 「咲いたよ、奈桜人」 頑張って世話をしてきた桜がやっと見事な花を咲かせたというのに、奈桜人の姿はない。 奈桜人は開花宣言が出た日、帰らぬ人になった。 難病を患い、余命幾ばくもなかった奈桜人はその命を削ってこの桜の世話をしていた。 ただ、別れた彼女にもう一度会いたい一心だったのかもしれない。 でも私は思うのだ。 奈桜人はきっと、桜が咲いたって彼女は戻ってこないって知ってたんじゃないかって。
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