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「いま俺を呼びましたよね。
ナオトのばかやろーって」
完全に聞かれていた。
一気に顔がかーっと熱くなり、なにか言おうと口を開くけど音にならない。
「もしかしてナオト違いですか?」
おかしそうにくすくす笑われると、この場に穴を掘って埋まりたくなる。
「その。
……すみませんでした」
「別にいいですよ。
ばかやろーって叫びたくなるような気分だったんでしょう?」
男は手にしていた軍手を外すと、ちょいちょいと私を手招きした。
年の頃は私より少し上みたいだが、素性のわからない男に早々簡単には近寄れない。
「別になにもしませんよ」
男は無造作に河原に座ると、赤と黒のチェックの水筒から付属の赤いコップに、こぽこぽとなにかを注いだ。
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