桜の下で笑おう

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とうとうこぼれ落ちた涙を慌てて拭う。 絶対に泣かないって誓ってた。 でも、無理だった。 「本当に本当に先輩が好きだったの。 こんなに好きになったの、初めてだった。 失恋がこんなにつらいなら、もう恋なんてしたくない……」 拭っても拭っても涙はこぼれ落ちていく。 胸が張り裂けたんじゃないかってくらい痛い。 「泣きやんでください」 「ぐすっ。 ありが……」 男が親切に差し出してくれるタオルを受け取ろうとして躊躇した。 どこかの店名が青字で入ったその白タオルは、あちこちが泥で薄汚れている。 「……笑わせたいの?」 思わず睨むと、男はあたふたと慌てだした。 「あ、いや、その……」
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