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男は自信満々に胸を張っているが、去年の春に咲いてなかった枯れ木が、いくら証拠を見せられたといっても咲くとは信じられない。
「だから、咲いたら笑うって約束してください」
「あー、うん。
わかった」
にっこりと笑う男は咲くと信じているのだろう。
でも私は咲くとか咲かないとかどうでもよくて適当に返事した。
だって、もう二度とこの男には会わないだろうって決めつけていたから。
それから河原を通りかかると、ときどき男が桜の手入れをしてるのを見かけた。
前からしていると言っていたが、もしかしたらいままではこんな風に気をつけて見てなかったから、気づかなかっただけかもしれない。
いつも無視していたが、一度気になると気になって仕方ない。
しかも男は恐ろしく要領が悪かった。
「ねえ!
なにしたらいいの!?」
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