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とうとう見るに見かねて、手伝うようになった。
「あー、ありがとう。
じゃあこれ、持ってくれますか?」
男――奈桜人はいつもへらへらと笑っている。
その笑顔と一緒で体力もへろへろだった。
私より重いものが持てない。
すぐに疲れて休憩する。
きっといつもデスクワークで、日の射さない部屋に一日中籠もっているんだろうと思っていた。
けれどそうなると、どうしてそこまでしてこの木に花を咲かせたいのかわからない。
「約束したんですよ、彼女と。
この桜が咲くのが見てみたい、この桜が咲いたらまた会おうって」
それは彼女が奈桜人と別れる口実だったと思うのは私だけだろうか。
私ですらこの桜が咲くとはまだ信じてないのに。
でも奈桜人は信じているようだからなにも言わないでおいた。
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