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「私は…、中学生が対象の塾だったんだけど、国語と数学!特に、国語を教えるのは、楽しかったな。国語は得意、ってのもあるし、塾の生徒たちが、私のことを、
『麻衣先生、麻衣先生!』
って言って、慕ってくれたんだ。それが私、本当に嬉しかった!
それで、国語だけでは回らない、ってことになって、数学もちょっと、教えてたんだ。あと、
『鈴木さんは文学部なら、英語もいけるかな?』
って塾のオーナーに訊かれたんだけど、
『それはちょっと…。私、英語は苦手なんです。』
って言って、止めてもらったんだ。もちろん、中学英語なら何とかなる、そんな気もしたんだけど…ね。
それに、私より英語の得意な講師のバイトの人もいたから、そっちに任せた方が、生徒のためにもなるし…ね。」
「そうなんだ。でも、これから勉強して、英語を教えられるくらい、英語が得意になれたらいいね!」
「そうだね!
でも、今のバイトも、バイト仲間の人間関係も良さそうだし、ずっと、続けていけそう!とりあえずがんばって、お金、稼がないとね!」
「ようし、僕もバイト、頑張らなきゃな!」
「そうだね。確か健吾も、塾のバイトだったよね?」
「そうだよ!」
「あ、ごめん。私、今日の晩も、レストランでバイトなんだ。
だから、そろそろ帰るね。」
「分かった。じゃあまたね、麻衣!」
「またね、健吾!」
2人はこう言って、その日は帰ることとなった。
そして、麻衣はバイト先の、レストランに来ていた。そのレストランは、麻衣の下宿先のアパートから、大学側とは反対方向に、歩いて10分くらいの所にあった。実は、そのレストランのある辺りは、高級住宅街で、マンションだけでなく、豪邸のような家まである。そのため、例えば一般のサラリーマンにしてみれば、
「少し敷居が高い。」
と感じさせるような独特の雰囲気を、その街は持っていた。
そんな立地条件の店であったため、自然と客層も、いわゆるお金持ちが多く、そこのレストランで働く従業員にも、(たとえバイトでも)気品が求められた。
ちなみに、麻衣はバイトの面接時から、
「この子、可愛らしい子だなあ。それに、品もある。」
と、面接官に思われていた。そして、簡単な模擬接客のテストもクリアし、晴れて、その店のスタッフとして、働くことになったのである。
「いらっしゃいませ。ご注文は、何がよろしいですか?」
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