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「そ、それは…もちろん麻衣だよ。」
「じゃあ健吾もイギリス派だよね?」
「え、いや、それは、その…。」
「冗談だよ冗談。ちょっと困った健吾、かわいかった!健吾がフランス好きなの、ちゃんと分かってますって!」
麻衣はそう言って、笑った。実は健吾は、(少しではあるが)人の話を鵜呑みにする所があり、麻衣は、そんな健吾をよくからかって、遊んでいた。
「ちょっと、僕、またからかわれた?」
健吾が少し落ち込みながらそう言うと、
「気にしないで、健吾。私、健吾のそういう所も含めて、好きだから。」
と、麻衣がすかさずフォローする。それを聞いて健吾は、
「僕、麻衣のちょっと小悪魔な所も、優しい所も、大好きだよ!」
と言う。
傍目から見ると、ただのノロケとも、イタイカップルともとれる2人であったが、2人は喧嘩も全くせず、仲良しであった。
2人の出会いは、大学1年生の時である。麻衣、健吾の2人は、大学に入学してすぐ、学内の文芸サークルに、入った。
「へえ~。河村(かわむら)くんって、フランス文学が好きなんですね!」
「そうなんです!鈴木(すずき)さんは、フランス文学は好きですか?」
「いえ、私はフランスは詳しくありません…。私は、イギリス文学が、大好きなんです!」
河村健吾、鈴木麻衣の2人は、たまたま文芸サークルの説明会で、隣の席に座ったのがきっかけで、話をするようになった。
「でも私、英語はそんなに得意じゃないんです…。イギリス文学や、イギリスの国の雰囲気は、好きなんですが…。
だから私、もっと勉強して、いつかは英文で、イギリス文学を読めるようになりたいんです!」
「そうですか。勉強熱心ですね。
僕は、英語はそこそこいけるんですが、フランス語はまださっぱりです…。僕も、いつかはフランス語で、フランス文学の作品を読めるようになりたいです!」
「えっ、英語…いけるんですか?羨ましいなあ…。それに、フランス語なんて、私には手の届かない世界です…。
でも、私も河村くんに、負けないようにしないとですね!」
「そっか。でも、いっぱい勉強したら、絶対に英語、上達すると思います!頑張ってくださいね!」
「ちょっと、今上から目線じゃなかったですか?」
「え、いや、決してそんなつもりは…。すみません。」
「冗談ですよ冗談。河村くんって、面白いですね!」
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