第1章

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2人は、初めて会った時から、初対面とは思えないほど、よくしゃべった。お互いの波長が合うというのは、こういうことを言うのだろうか?麻衣、健吾の2人は、出会ったその日から、周りにそう思わせるほど、仲良くなった。  麻衣は、背が高く、誰からも美人と思われるようなルックスであった。そして、大学に入ってからダークブラウンに染めた髪も綺麗で、すぐに、大学のマドンナ的存在となった。一方の健吾は、背もそんなに高くなく、見た目もそんなにかっこいいとは言えないが、優しそうな性格が見た目からにじみ出ており、その性格から、学内で健吾のことを慕う人も、すぐに増えた。  また、健吾は学内でもどちらかというと優秀な方で、特に英語のスキルは学内1番ではないか、と言われるほどのものであった。    「鈴木麻衣さん。僕、あなたのことが好きです。僕と、付き合ってください!」 そう健吾が麻衣に告白したのは、2人が出会ってから約2カ月後の、6月の始めのことであった。  その日は梅雨入り前で、麻衣や健吾の通う大学の中にも、初夏の気配が漂っていた。そして、勉強は得意であるものの、異性との交際には慣れていない健吾にとって、初夏の陽気は、自分の気持ちを好きな人に伝えることを後押ししてくれる、そんな風に感じられた。  「はい、こんな私でよければ。」 麻衣は健吾の言葉を聞き、そう健吾に伝えた。実は、麻衣の方も、異性との交際には、(その見た目の割には)慣れていなかった。麻衣はそのルックスから、高校時代もモテていたが、麻衣は、 『私に近づいてくる男の人は、みんな下心がある。』 と、思っていた。実際それは事実で、真剣に麻衣と交際したいと思っている人は、今まで(0ではないものの)少数派であった。そのため、真剣に、心から自分を好きでいてくれる健吾に対して、また話も合い、一緒にいて楽で楽しい健吾に対して、麻衣の方も、好意を寄せていた。    「何、ぶんし…構文?健吾、これ、難しいよ…。」 「そうだね。分詞構文は、確かに難しいね。でも、麻衣ならできるよ。頑張って!」 麻衣は健吾と付き合い始めてから、健吾に英語を教えてもらっていた。 「うん、分かった。頑張るね。絶対英語、できるようになるんだから!」 「ようし、その息、その息!」 「でも、 『なんでこんなこともできないのに、大学の入試に受かったんだろう?』 って、健吾、思ったでしょ?」
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