第1章

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「え、そんなこと思ってないよ。」 「嘘だあ~。」 「いや、本当だって。誰にでも、得意な科目、苦手な科目があるからね…って、なんか麻衣が英語苦手って言ってるみたいだね。ごめん。」 「あ、ホントだ~。  もちろんさっきのは冗談だよ。健吾って、本当に冗談でも鵜呑みにするんだね。」 「え、そ、そうかな…。」 「まあ根が純粋ってことかな?」 「ありがとう、麻衣。」 2人は付き合い始めてから、何度もこのようなやりとりをしていた。  「それでなんだけど、実はね私、自分で言うのも何だけど、国語はめっちゃ得意なんだ。私、小さい頃から、外で遊ぶのも好きだけど、本を読むのも大好きだったの。だから私、小さい時から、子ども向けの世界の名作文学を、読み漁ってたんだ。  その甲斐もあって、基本的に、国語の成績は、高校時代からトップクラス!ねえ健吾、すごいでしょ?」 「うん、すごいね。それに、麻衣は頑張り屋さんだもんね。勉強、頑張ったんだね!」 「いや~それほどでも…あるかな、なんてね。 さっきのは冗談。  それで私、そんな名作文学の中でも特に、例えばピーターラビットとか、イギリスの文学に、興味を持つようになったの。それで、将来私も、英語を使いこなせるようになりたいって、思ったんだけど…。  英語を勉強し始めたのは中学からだったんだけど、これがさっぱりで…。何か私、人生初の『挫折』みたいなものを経験しちゃった。でも、やっぱりイギリスが好きで、今に至ってるんだけどね。  だから私、この大学生の間に、何とか英語をマスターしたいんだ!」  実際、麻衣は、英語の検定試験を、受けようとしていた。  「そっか。僕にできることがあれば、何でも協力するよ!」 「やっぱり健吾は優しいね。  ところで健吾は、国語は得意だった?」 「え、ま、まあね…。」 「もう、謙遜しちゃって。本当は得意だったんでしょ?健吾を見てたら、分かるよ。」 「え、あ、ごめん…。」 「健吾、人といる時はいっつも控えめだけど、私といる時は、謙遜なんてしなくていいんだよ。  私には、気を遣わないでね。私、ありのままの健吾が、好きだから。」 「分かった。いつもありがとね、麻衣。 じゃあ言います、僕は英語も国語も、めっちゃ得意でした!」 「何それ~。急に嫌な奴みたいじゃん。」 「やっぱり僕にこの言葉は合わないね…。」 「そうかな?」  2人はそう言って、笑った。
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