第1章

6/78

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
 2人は付き合い始めてから、色々な方法で、2人の時間を共有してきた。まず、付き合い始めて最初のデートは、映画鑑賞であった。その映画はフランス映画で、6月、初夏の薫りが色濃く漂う、そんな映画であった。そして健吾は、映画の内容よりも、麻衣がその映画を見て、 「健吾、この映画、めっちゃ良かったよ~。私、フランス映画って、見るの初めてだけど、こんなに感動するとは思わなかった。それに、フランス語って、なんかかっこいいね!」 と言ってくれたことを、強く覚えていたのであった。    そして、2人は一緒に、ショッピングにも行った。健吾が覚えている、その日は7月の終わりで、男性なら白いTシャツが似合う、そんな季節であった。その日、麻衣と健吾は、近くのショッピングモールに出かけた。 「それにしても暑いね、健吾。」 「そうだね、麻衣。」 その日は、8月ほどではないものの、気温が30℃を超える、いわゆる「真夏日」であった。まさに、夏うたが流れ、街全体が熱気に包まれる、季節だ。ショッピングの道中、そのことを健吾が麻衣に話すと、 「そういえばさ健吾、私、ピアノが得意なんだよ!」 と、麻衣が語り出した。  「え、そうなんだ。僕は楽器はできないから、尊敬するよ…。」 「あ、もしかして、今私、健吾に勝った? やった!  何か私、今まで健吾に勝ってる部分がないような気がしてたから、ちょっと嬉しいかも。」 「そう、じゃあおめでとう、麻衣。」 「じゃあって何よ~。  まあ冗談はこのくらいにしておくね。  私、小さい頃から、ピアノを習ってたんだ。それもあってか、音楽は昔っから大好きで、ジャンルも、洋楽から邦楽、クラシックからジャズ、ロック、ヒップホップ、何でも好きなんだ。  でも、やっぱり1番好きなのは、イギリスの音楽かな、とは思うんだけどね。」 「そうなんだ。僕は、最近流行りの音楽くらいしか知らないんだけど…。  でも、麻衣がピアノを弾いてる所、見てみたいな。」 「そうだね。 でも私のピアノは、高くつきますよ~。」 「麻衣の頑張ってる姿が見られるなら、いくらでも出すよ!」 健吾は、夏の陽気のせいか、いつもの健吾らしからぬ、台詞を吐いた。  「またまた~。ってか、健吾でもそういうこと、言うんだね。  でも本当に、健吾に私のピアノ、聴いて欲しいな。」 このような話をしながら、2人はショッピングモールに到着した。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加