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2016年10月。夏の暑さも一段落し、世間は秋のモードになっている。実際、夏ほどの活発な雰囲気はないかもしれないが、世間はこれから迎える、ハロウィンや紅葉などの秋のイベントに、浮き足だつ雰囲気であった。
麻衣と健吾は、その日からが大学の新学期ということもあり、お互いに午前中で講義を終えた後、学内のカフェで過ごしていた。そのカフェは、なんと図書館の建物の中にあり、「借りた本を、そのままカフェに持ち込んで読める。」
と、学生から評判になっているカフェであった。
また、そのためか内装もどちらかというと落ち着いた雰囲気で、活気のある夏よりも、どちらかというと秋の方がしっくりくる、そんなカフェであった。
「確かにそうだね…。それで、麻衣の新しいバイトって、どんなの?」
「おしゃれな高級レストランの、ウェイトレスのバイトだよ!」
「へえ~。高級レストランか…。行ってみたいけど、ちょっと高めなんでしょ?」
「そうだね…。学生が入るには、ちょっと高いかもしれないね…。
でも、そこのレストラン、内装もすごく綺麗だし、そこに来るお客様も、品のある人ばっかりで、本当にいい雰囲気なんだ!
…まあ、私まだ1日しか、そこで働いてないんだけどね。」
「そっか。でも麻衣が言うなら、間違いなさそうだね!」
「いや、私のアンテナは、当てにならないですよ~。」
「えっ、そうなの?」
「そこは否定して欲しかったな…。」
「あ、ごめん。そんなことないよ!」
「ちょっと、もう遅いよ~。」
こう2人は冗談を言って、笑った。
「ところで麻衣、麻衣は前の…塾のバイト、どうして辞めたんだっけ?」
「あれ、言ってなかった?
実は塾のバイト、私すっごく気に入ってて、大学卒業するまで、ずっと続けよう、って思ってたんだけど、そこの塾、個人経営の塾で、塾のオーナーが、
『ちょっと、経営が厳しくなってきたんで、塾をたたまないといけません。』
って、言ったんだ。それで、私も仕方なしに、辞めることになっちゃった。
まあ、『辞める』って表現が、正しいのかどうか、分かんないんだけどね。」
「そっか…前に訊いたかな?ごめん、忘れちゃった。」
「ちょっと、そんなことではダメですよ~。」
「ごめんね。」
2人のバイトに関する話は、さらに続いた。
「それで、麻衣は何を教えてたの?」
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