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男 退屈。出社前のスーツ姿の人で溢れているので、店は多忙だ。
しかし私は退屈だ。朝の時間はほぼ毎日同じ客が来る。注文もほぼ毎日同じだ。珈琲だけの人、いつも決まったモーニングメニューの人、絶対に角の席に座りたがる人。あぁ、同じだ。
午前七時五十分。朝のピーク、そして、、、、
あぁ、勝手に座っている。まだ片付けてない席に座って呼んでくる。急いで片付けて注文を取る。
「ホットコーヒー」
私のことを見もせず吐き捨てるように、おもむろに煙草をふかし始める。
向かいの席から声が聞こえる、振り返ると席がまだ片付いてない
「ホットコーヒー」
訝しげな顔をした中年の男が私を一瞥して端的に言葉を発する。
少し離れた席でまた呼ばれる声がする。
「ホットコーヒー」
瞬間、感情のシャッターが降りた。
サラリーマン モーニングコーヒーを飲みながら会社で使う資料を整理する。店に入って四十分くらいだろうか。最後の煙草をふかし店を出る準備を始める。入り口を見てみると席待ちの客がチラホラ。相変わらず混んでいると思いつつレジへ。忙しかったのか、店員が来るのに少し時間がかかった。
「大変お待たせいたしました。」会計と同時に待っていた客が私の居た席へ。「少々お持ちください、申し訳ございません。」私の居た席に行こうとした客に店員が声をかけていた。
お釣りをもらっていた私は店の外に出た。明日は座れるかな、そんなことを思いながら朝日の眩しさに目をひそめた。
男 ルールでもあるのか、そういわれたらそんなものはない。マナーというのも違うかもしれない。しかし少しだけ考えればそうならないと思う。
急くことによる得が双方にないのだ。早く座って注文したい、そう思う人ほど、注文の後はゆっくりしている場合がほとんどだ。
朝、ほとんどの人が自分のことで精いっぱいになる。出勤前、眠気、疲れ、理由は人それぞれきっと違う。皆、できる限りの最小限の行動をおこしている。そんな人で店は溢れている。
朝のあの時間、あの空間は時が止まっている。無愛想にコーヒーを頼む人も、角の席に座りたがる人も、煙草をふかしている人も皆、止まった時間で生きてる。私は自分は違うと思ってはいるが、おそらく、私の時間も止まっているのだろう。
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