6-モーニング

1/3
前へ
/25ページ
次へ

6-モーニング

男   午前五時の横断歩道、周りに人影はなく、太陽が昇っていない暗い景色に、信号機の赤い光が起きたばかりの目に刺さる。目の前の道路を走る車は一台もなく、律儀に信号を守っている私は、周りから見たら不気味にも見えるだろう。『赤信号だから止まる』、信号がある国だったら皆知ってるルール。しかし、別に渡ったって構わないと思ってる。車が安心して走るために歩行者が止められる、そのためのルール。でも今車は走っていない。五秒もあれば向こう側に行けるのだから。誰も見ていないのだから。誰も咎めない。そんな感情論。 十秒ほどたった時、後ろからサラリーマンらしき人が私の脇を通り過ぎて行った 信号はまだ、赤。 サラリーマン   スーツに着替え、俺は今家を出た。時間は午前六時半。今の会社に勤めて二十年あまり、生活リズムも固定化してきた。 最寄駅まで徒歩一五分ほどの道のり、音楽プレイヤーでサザンを聞きながら歩くのが決まり。しかし最近、なぜか犬の散歩をする人が増えた。 すれ違うたびに犬が吠える。煩わしい、音楽が揺れる。朝の楽しみを邪魔しやがって。不機嫌な俺は定刻に到着した電車に乗る。  今日は座れなかった。 男   午前五時五〇分、私はファミレスの店内で開店準備をする。今日も店の前には客がいた。オープンの六時と同時に入店するいつもの人たちだ。 平日、オープンに並んでいる彼らを見てると、私は途端に気味が悪くなってくる。私は彼らが何者か、何の職業をしているのかを知らない。彼らは、それぞれ頼む商品がすでに決まっている。毎日毎日、同じものを頼む。 午前五時五十五分、あと五分で店が開く。 サラリーマン   電車を降りたら足早に駅近くもファミレスへ。この辺には朝からやっている飲食店がここくらいしかない。この店舗はビルの一部であまり広くはないので、早くいかないと私と同じような出社前のサラリーマンで埋まってしまう。喫煙の席はさらに少ないので尚更だ。 入店して確認、空いている。足早に席に着き店員を呼ぶ 今日は楽に座れた
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加