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「はい、『下宿したい。』っていうのは聞いていたんですが、実際に準備しているっていうのは、今初めて知りました。」
「そう…。
そういえば、優くん、史香とケンカでもしたの?昨日なんかも、
『史香が一人暮らしをし始めたら、優くんと、もっと頻繁に会えるわね。もちろん、優くんは優しそうな男の子だし、何も心配はしていないわ。ただ、お母さんやお父さんは、史香に毎日会えなくなって、ちょっと寂しい気もするけど…。』
って話をしたんだけど、史香、浮かない顔をしてたの。それで、それ以上は何も訊かなかったんだけど、最近、うちの史香とうまくいってる?」
「実はそれが…。」
優は、ここでも史香との経緯を話す羽目になった。
「あらそう…。何とお詫びを言っていいか…。優くん、ごめんなさいね。」
「いえ。お母さんが、謝ることではありませんから。大丈夫です。ただ、史香さんと、せめて連絡だけでもとりたいんですが、史香さんの下宿先の住所、分かりますでしょうか?」
「それが、史香に、
『ところで優くんには、一人暮らしの話はしてるの?』
って訊いても、
『してない。その話はもうしないで。あと、優には私の下宿先、絶対に教えないで!』
って、口止めされてるの。それもあって、優くんに、さっきの質問をしたんだけど…。
本当にうちの史香、失礼ね。後で注意しておきます。ただ、下宿先はそういうことだから、教えられないわ。本当に、ごめんなさいね。」
「そうですか…。分かりました。今日はわざわざお出迎え頂き、ありがとうございました。」
「こちらこそ、何もできずにごめんなさいね。」
優に向かって何度も謝る史香の母親の姿を見て、この人は史香に似て、感じのいい人だな、優はそう思った。
しかし、何の収穫もなく、優は史香の実家から、帰ることになったのである。
翌日、優は大学の講義に出ていた。前日、片道2時間の小旅行をしたせいで、優の体には、少しばかりの疲労が残っている。優は、「史香は、毎日これを経験していたのか、大変だな。」
と思い、史香への思いをますます強くした。
その日の1限は、マクロ経済学の講義であった。ただ、この講義は経済学部の専門科目ではなく、一般教養科目に位置づけられていたので、教育学部の史香も、
「私、経済学部の講義も、受けてみたい!」
とのことで、履修をしていた。
そして、例えば、
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