第1章

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   彼女のdiary  一 別れ話  「突然だけど、私たち、別れない?」 大野優(おおのゆう)は、付き合っていた恋人の、新川史香(あらかわふみか)に、こう切り出され、戸惑っていた。  「急に何でそんなこと言うの?昨日まで、俺たち仲良かったじゃん。そんな、急に…。史香、何かあった?」 「別に何もないよ。ただ、私が優と別れたくなっただけ。  話したいことはそれだけだから、私、もう帰るね。さよなら。」  こうして優と史香は、別れることになった。しかし、優の頭は、状況を理解できていない。確かに、ここ1週間ほどは、優と史香は2人とも忙しく、会う時間はなかった。でも、お互いにメールのやりとりはしており、そのやりとりの中には、  「最近は忙しくて会えないけど、元気?」 「優に会えないと、ちょっと、いやかなり寂しいよ~。また連絡してね!」 「分かった。俺も史香に会いたい。また、時間ができたら、連絡するから。」 など、他人が見たら少し恥ずかしくなるような内容のものもあった。  そして、優が史香に別れを切り出された前日のメールも、 「ごめん、優。明日、ちょっと話があるんだけど、いい?」 という内容のもので、少し業務連絡口調が気になったとはいえ、決して別れを匂わせるような文面ではなかった。  それなのに…。  1週間ぶりに優と史香が会って、最初に言われた言葉が、「別れよう。」という内容のものであった。そして、史香は有無を言わさず、その場から一方的に去っていった。1人残された優は、ただ、茫然とするしかなかった。  そこは、優と史香がデートでよく行っていた、カフェであった。優は、特にカフェが好き、というわけではないが、史香がこういう場所を好きなので、一緒によく、あちこちのカフェへ行っていた。その中でも、今日会った場所は、優と史香の通う大学から近く、行きつけになっている、カフェであった。
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