第1章

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史香は、サークルに入る時、このように元気にあいさつした。そして、その姿が、優には眩しく映った。  史香は、背はそれほど高くなく、きれいなショートカットの黒髪で、大学生らしからぬあどけなさを残した、少女のような女の子であった。また愛嬌のある笑顔を振りまき、みんなを元気にさせる、そんな力も持っていた。そして、優はそんな史香を見た瞬間、恋に落ちてしまった。  「新川史香さん、初めまして。僕は、大野優って言います。」 優は史香と顔を合わせた時、こうあいさつした。しかし、この時点で史香を異性として意識していた優は、ろくに目も合わせることができず、 「ヤバい、俺、多分新川さんに嫌われた…。」 と思い、1人で落ち込む羽目になった。ただ、 「はじめまして、大野さん。初めてのサークル活動で、分からないことだらけですが、いろいろ教えてくださいね。」 と史香に優は言われ、そのことで、 「よし、ここで新川さんにアピールして、良く思われたい、いや、思われるぞ。」 こういった気持ちも、優は持つに至った。  その後、運命のいたずらか、優と史香は軽音サークル内で結成された、バンド「PEACEFUL MIND(ピースフル・マインド)」の、それぞれギターとピアノ担当として、同じ舞台で演奏をすることになった。優は、そのことが決まった時、 「やった、チャンス到来!日頃のギターの特訓の成果を、発揮しないとな。」 と、俄然やる気になった。  そして、同じバンドでプレイすることになったことがきっかけで、優は、史香と話す機会が多くなった。そして、実は史香は、実家がかなりの資産家で、生粋のお嬢様である、ということが分かった。また、バンドでもプレイすることになったピアノは、3歳の頃から習っており、かなりの腕前である、ということ、今までクラシック音楽を中心に演奏してきたので、少し趣向の違う、ロックなどの音楽に挑戦したくて、ここの軽音サークルに入ったこと、などを、史香は優に伝えた。そして、優の方は、 「えっ、すごいお嬢様。俺なんか、相手にされるかな?」 と、一瞬怯んだが、史香は、決して家が裕福ではない優のことも、差別することなく接してくれたので、優は心の中で少し安心した。  また、史香の方は、お嬢様、という自分の境遇や、あどけない、可憐な少女のような見た目とは裏腹な、サバサバした一面を持ちあわせており、例えば、 「私、よく、
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