第1章

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「君、かわいいね。よろしく。名前何ていうの?良かったら今度、俺とご飯行かない?」などの露骨な誘いが、頻繁にあった。そのため、史香はそのことに少しうんざりし、そういった誘いがある度に、 「すみませんが、私、忙しいので…。」 と、断っていた。  また、それもあって、最初史香は、 「今すぐにサークルに入ったら、また変な男性に声をかけられそうで嫌だな…。だって、同じ学部の学生からも、かなり声かけられたし…。サークルに入るのは、もうちょっと後にしようかな~。」 と考え、優が4月当初に入ったサークルに、(もちろん、最初から史香はそのサークルに興味はあったのだが)遅れて入ることにしたのである。  そして、一応その効果はあり、4月当初激しかったサークルへの勧誘や、それに名を借りたデートの誘いなども、葉桜の季節には落ち着いており、史香が思ったように、史香に積極的に声をかけてくる男性は少なかった。  そして、そんな時に、史香は優と出会った。 史香は、優を見て、 「あ、また変な男性から声をかけられそう…。」 と、すぐに思った。実際、この時点で優は史香に好意を寄せており、史香の方も、それに気づいていた。(この辺りは、史香にとって、「いつも通り」であった。)そして、 「また、デートに誘われたら、断らないといけないかな~。」 と、史香は優を見て、そう思った。  しかし…、  優は、今までの他の男性とは、違った。まず、優は史香に対して、積極的に声をかけようとはしなかった。それは、優がどちらかというと、女性に対してシャイな部分があるためであったが、それが史香には、 「あれ、この人、声をかけてこないんだ~。」 と、新鮮に映った。  また、優は史香にアピールするために、ギターの腕前を、積極的に披露しようとした。それが、史香の目には、かわいく映った。実際、優のギターは、この時点で初心者とは思えないほど上達しており、 「この人、ギター初心者みたいだけど、とてもそうは思えない!」 と、史香に思わせることができ、アピール効果は抜群であった。  それに、 「初心者から始めて、ここまでギターが弾けるようになるなんて、この人、努力家なのかな?」 とも、優は史香に思わせることができた。(やはり、優のギター作戦は成功だったと言える。)
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