第1章

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 そして、極めつけは、優の史香に対する態度であった。今まで史香は、男性から声をかけられ、それを断ると、その男性たちは、 「何だ、乗って来ないのか。よし、次いこ、次。」 といった態度を、声に出す出さないに関わりなく、あからさまに出していた。そのため、史香は、 「男の人って、私たち女の子の、見た目には興味あるけど、性格とか、中身には、興味ないんじゃないかな。」 と考え、少しだけではあるが男性不信になっていた。しかし、優は違った。優と史香が所属することになった、軽音サークル内のバンド、「ピースフル・マインド」の活動を通して、優と史香は話す機会が多くなったが、その時の優は、史香の話を、真剣に聴いてくれた。そして、史香が優に、「音楽の教師になりたい。」という、史香の夢を話すと、 「すごいじゃん、史香さん!夢に向かって努力するって、かっこいいことだと思うよ。俺、史香さんの夢、全力で応援するから!」 と、優は史香に伝えたのである。  そして、徐々にではあるが、史香にとっても、優は特別な存在になっていった。この人は、他の男性とは違う。私にとって、特別な人だ。そして、私は、この人と一緒にいたい―。史香も、優と同じく、そのような気持ちを、持つようになった。  「史香さん、僕と付き合ってください!」 優が史香に交際を申し込んだのは、それからしばらくしてのことである。この時2人は、お互いにお互いを愛しく、大切に思っていたので、史香も、 「はい、喜んで。」 と、優の申し出を受け入れた。こうして2人は、付き合うことになったのである。  それから2人は、2人の所属しているバンドの活動や、2人きりでのデート等を通して、順調に愛を育んでいった。特に、バンド活動の方では、2人で一緒に作詞、作曲をするなどして、2人の絆を深めていった。また、お互いに、 「これって、2人の共同作業だよね、史香?」 「うん、優。こういうことができるのも、音楽ならではだよね~。」 と言い合い、この作業を、心から楽しんでいるようであった。(ちなみに、2人は付き合い始めてから、お互いのことを「史香」「優」と、下の名前で呼び捨てにするようになっていた。) ※  ※ ※ ※
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