第1章

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 あの日から、約1年弱が過ぎた。葉桜の季節に、優が史香と出会い、交際をスタートさせてから、新緑の季節、そして葉が真緑になる8月、また秋、そして木が枯れる冬の季節を、2人は過ごしてきた。その間2人は本当に仲が良く、些細なケンカすら、してこなかった。それなのに、今は―。史香の一方的な「別れよう、私たち。」という宣言で、今まで築いてきた、優と史香との信頼関係、愛が、簡単に壊れてしまった、優はそう思った。 「俺、史香に嫌われるようなこと、したかな?もしかしたら、最近忙しかったことを言い訳にして、俺、史香とのことを、真剣に考えてなかったのかもしれない。それで、史香に対して、気づかないうちに冷たい態度をとってしまったのかもしれない。そうだきっと。俺が悪いんだ。だから史香にちゃんと謝って、許してもらおう。優しい史香のことだから、きっと、許してくれるに違いない。」 優は、史香に振られた直後、そう考えた。そして、史香の機嫌が良くなるまで、ちょっと待っておこうと思い、もう1週間ほどしてから、史香に電話して、謝ることに決めた。  二 彼女のdiary 「もしもし、俺、優だけど。時間がある時でいいから、電話かメール、してきてくれないかな。俺、やっぱり史香がいないと、ダメなんだ。まだ、史香のことが好きだよ。だから、せめて、『別れよう。』って言った理由だけでも、教えてくれないかな?もちろん、悪い所は直すから。  とにかく、連絡待ってます。」  優は、史香に留守電を入れたが、一向に返答等は返って来なかった。史香は、あの日、「私たち、別れない?」 と言った後から、優の連絡を無視し続け、今まで全く、優と話をしようとすらしていない。  「史香ちゃん、最近は学校にも、あんまり来てないみたい。優さ、もう、史香ちゃんのことは忘れなよ。他にも、いい女の子だったら、いっぱいいるんじゃない?何なら、俺が紹介してやるよ。」 優の男友達の、鈴木卓也(すずきたくや)が、優を見かねて、そう優に伝えた。卓也は、優の高校時代からの親友で、たまたま同じ大学に、進学することになったのであった。そして、卓也の方は史香と同じ、教育学部に進学したため、史香とも顔なじみになり、優と史香が付き合っていた頃は、優、史香、卓也、卓也の彼女の4人で、ダブルデートをしたこともある。  「ありがとう、卓也。でも、俺…、史香のことが忘れられない。」
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